

安部公房『内なる辺境』:「正統な国民」
やはり安部公房の文章は面白い。一つの事柄・思想・理論について、色んな角度から眺め、つつき回し、戯れる。そしてその戯れ方は実に論理性に富み、合理的である。安部公房は東大医学部を卒業しているが、かなり数学ができたのではないかと文章を読む度に思ってしまう。...


松本瑠樹コレクション「ユートピアを求めてーポスターに見るロシア・アヴァンギャルドとソヴィエト・モダニズムー」:コラージュという手法
米とキューバが国交回復しましたね。急なことだったのでびっくりしました。 さて、今回は冷戦期にロシアで起こったロシア・アヴァンギャルドという芸術運動を紹介します。 「ユートピアを求めて」というタイトルが表わすように、当時、ロシアの知識人たちは今までにはない夢のような社会の創成...


マグリット展:「山高帽」なるもの
久々の更新です。 マグリット展に行ってきました。ぼくはシュルレアリスム作品が好きなので、今回のマグリット展は琴線に触れる作品が多かったです。 ただ、マグリットは作風をコロコロと変える人なので、全然食指が動かない作品も多々ありました。 作品リストは以下のとおり。...


『安野光雅展--ふしぎなえから繪本三國志まで--:フッサール「他我」とトポロジーについて
安野さんは新国立競技場に反対声明を出していたので、名前だけは知っていました。 また、彼は日本語についてもかなり造詣が深く、和歌集なども出しています。 彼の作品は、穏やかでユーモラスな水彩画で時に目の錯覚を利用した絵(トポロジー)(下図参照)も描きます。...


Y.M.O:クール・ジャパンとは「中空構造」
このごろYMOにはまってます。やっぱり良いですね。坂本龍一さんには早く体調回復して欲しいです。 現在、きゃりーぱみゅぱみゅやPerfumeやSEKAI NO OWARIが「クールジャパン」として世界に発信されていますが、彼女らの音楽はYMOと地続きです。...


高松次郎「ミステリーズ」:反知性主義と「未知」
いとうせいこうも絶賛の「ミステリーズ」にいって参りました。高松さんは、ずっと気になっていたハイレッドセンターの一人です。このような展示会ではなく、ハプニングと呼ばれる芸術行動を見ないと、彼らの本質を見たことにはならないのだと思いますが、今はもう見ることができないので仕方あり...
寺子屋ゼミ:つくられる病
ついに、ついにお会いしてきました。内田樹先生に。 本やブログ、ラジオから想像していたとおりの人柄で、無邪気な大人 という感じでした。威厳がありながら、どこか安心するような。大変貴重な経験となりました。(しかも!釈先生にも意図せずにお会いすることができるなんて!感無量!)...


内田樹×中田孝『一神教と国家』:殻を破る
これは、「今」、できるだけ多くの人に読んで欲しい本です。 今、ぼくたちは、イスラーム世界のことを知るべき時なのだと思います。 「テロリスト」と呼ばれる人々に対して、どのような行動をとるべきかについては、盛んに議論されていますが、彼らがなぜ「テロリスト」と呼ばれるに至ったかに...


夢野久作『ドグラ・マグラ』:②「胎児の夢」
2、胎児の夢 理論 まずは、どんな理論かという説明から。 胎児の夢についての説明を、作中から引用します。 人間の胎児は、母の胎内にいる十ヶ月の間に一つの夢を見ている。 その夢は、胎児自身が主役となって演出するところの「万有進化の実況」とも題すべき、数億年、ないし、数百億年に...


ロバート・ストーン『パンドラの約束』:後退戦に希望はあるか?
『原発推進映画』ということで、気になっていた映画ですが、何から話すべきでしょうか。この映画で出てきた話題一つ一つ取り上げてコメントするのは違う場所でやります。この映画の登場人物達と話し合うためには、そんな些末なことをネタにしては、議論にならないでしょう。見ているものと目指す...