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Y.M.O:クール・ジャパンとは「中空構造」

  • 執筆者の写真: krmyhi
    krmyhi
  • 2015年3月2日
  • 読了時間: 4分

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 このごろYMOにはまってます。やっぱり良いですね。坂本龍一さんには早く体調回復して欲しいです。

 現在、きゃりーぱみゅぱみゅやPerfumeやSEKAI NO OWARIが「クールジャパン」として世界に発信されていますが、彼女らの音楽はYMOと地続きです。

 それは楽曲に電子音を持ち込んでいるという点で共通しているので、誰でも分かることだと思いますが、なぜ日本人はそれが得意なのか。つまり、「音楽」という人類共通の根源的な営みに、コンピュータを持ち込むことに躊躇がないのか、ということについてです。

 それを解き明かすためには、「中空構造」という概念を用いるのが有効かと思います。「中空構造」とは、心理学者の河合隼雄という人が発見した、日本の神話の構造です。

 日本の神話の代表である「古事記」には、3柱の神様が生まれるエピソードが数々語られますが、その3柱の中の最も中心的な神様だと推測される神様についての記述がほとんどありません。もっとも有名な組み合わせが、「アマテラス」「ツクヨミ」「スサノオ」の3柱ですが、「アマテラス」、「スサノオ」にまつわる神話は、『古事記』の中にたくさん出てくるのですが、「ツクヨミ」に関してはほぼ皆無と言って良いほど、語られません。

 このように、日本の神話において何度も繰り返される「語られない中心」の構造を分析し、河合は日本人の思想が「中空」であると述べています。

 日本人は、中身が「空」だから、今まで様々な文化を受け入れる器となってきました。異文化に対していきなりはねつけるのではなく、一度取り込んでしまって、もともとあったものとアマルガム(習合)させる。

 まさにこれが日本の音楽でも脈々と行なわれてきたのではないでしょうか。「音楽」という根源的で、人類共通であるが故に、現地の「民族性」をダイレクトに反映させてしまう分野において、日本人はコンピュータを持ち込むことに躊躇がありません。それはまるで、日本の民族性なんて「空」だぜ、と主張しているかのようです。そしてそのような電子音楽が、クラブ内で「内輪受け」するにとどまらず、「ポップ・ミュージック」=「大衆音楽」として、お茶の間で広く国民に支持を受ける点が、日本らしさなのではないかと思います。海外のことはよく分からないですが。

 まあ、これは既に指摘されていることだと思いますが、YMOより先に、ドイツのクラフトワークが電子音を用いた楽曲を生み出しています。日独どちらも戦時中に全体主義だったという共通点は興味深いですね。「中空構造」で中身がないということは、周囲によって自分のあり方がいかようにも変容するということであり、全体主義と結びつきやすいのです。(これは「中空構造」の悪い方の面です。)

 音楽からも国民性が窺える好個の例ですね。そしてこの「中空構造」は、「クラフトマンシップ」=職人気質と関係があるのだと思いますが話が広がり過ぎてしまうので、それについてはまた今度。日本もドイツも工業立国ですからね。

 前半はここまで。ここまでは多分既に誰かが述べていることだと思います。

 ここから先の後半は、多分まだ誰も指摘していないのでは・・・。

 YMOの前段階となるのが、意外にも荒井由美なのではないかと思います。ビブラートを効かせない乾いた歌声は、その「非人間性」のために当時、毀誉褒貶だったようです。

 YMOが音楽にコンピュータを持ち込む前に、ユーミンの「脱人間化」があった。「脱人間」の後に「機械化」がくるわけです。

 ユーミン→YMO→きゃりー〜やperfumeという流れには、もう一つ共通点があります。

それは、その当時流行した言葉や時代を表わすキャッチコピーです。

 ユーミンの時代(70年代後半)は、国鉄が「ディスカバー・ジャパン」というキャッチコピーで、国内旅行の宣伝に力を入れていました。

 YMOの時代(80年代初頭)は、「メイド・イン・ジャパン」、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」の高度成長期の時代です。日本製の製品を次から次へと海外へ売り出していきました。

 さらに、現在(2010年くらいから?)きゃりー〜やperfumeの時代は、「クール・ジャパン」として、工業製品だけでなく漫画やアニメなどのサブカルチャーを発信しています。

 「〇〇(英語)・ジャパン」というキャッチコピーと、「脱人間化」あるいは「機械化」した音楽が登場する時代がリンクするのです。面白いですね。

「ディスカバー・ジャパン」はどちらかというと国内向けのコマーシャルなので、当てはまらないかもしれませんが、「日本」というものを海外に向けて発信する時に、「人間性」を切り落とした音楽が生まれてくるのです。日本人は、無意識的に日本人の本質が「空」であることを理解しているのかもしれません。

 それにしても、様々なジャンルで使用できる「中空構造」を発見した河合の鋭敏さよ。

多分、後で俳優論を語るときも、河合隼雄にご登場いただくことになると思います。

 それでは〜。

 
 
 

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