

『キャプテン・フィリップス』:アフリカ東海岸と日本の自衛隊
この映画の存在を僕は知らなかったのだが、知人に勧められて見てみた。事実を基にした、大変スリリングなよくできた物語だった。 舞台はソマリア沖、乗組員20人の大型貨物船が、たった4人の海賊によって占拠されてしまうという話です。...


富田克也『サウダーヂ』:行き詰まった地方都市から
このサウダーヂは、たしか渋谷の小さな映画館で観たのですが、衝撃を受けました。時代のメルクマール(目印)となる作品だと思います。もっと評価されるべき作品です。 舞台は山梨県甲府。主人公らしき人物は二人います。一人は、上のフライヤーでも大写しとなっている土木作業員の若者。もう一...


纐纈あや『ある精肉店のはなし』:部落差別の特殊性
さて、今回は屠殺業(とさつぎょう)についてです。 ファストフードネイションを見てたら思い出しましてね。 この映画にはぼくも制作費をカンパしました。 纐纈あや(はなぶさあや)という方が監督なのですが、目の付け所がとてもいいですね。現代の影の部分を、決してペシミスムに陥らずに映...


『FAST FOOD NATION』:他人事
久々に映画の更新ですな。 『いのちの食べ方』系の映画かと思ったら、ドキュメンタリー映画じゃないんですね。ストーリーがあって、そこに精肉工場の映像が使用されるという感じです。『いのちの食べ方』はトピックが複数あって、ここまで牛の屠殺・解体に踏み込んでいなかったので、屠殺場の映...


伊丹十三 『マルサの女』:宮本信子という「座頭市」
伊丹十三の「〇〇の女」シリーズは面白いですね。痛快です。 どの作品も毎回、ストーリー展開は一緒です。 業界のエリートキャリアウーマン(宮本信子)がうだつの上がらない男達を助けて、悪者(主に伊東四朗)を懲らしめる、というストーリーです。「マルサの女」はその舞台が国税庁であり、...


庵野秀明『エヴァンゲリオン新劇場版』:「自己責任」と「不条理」
先日、イラクで日本人が人質にされているとの報道がありました。ぼくは、エヴァ祭り(日テレ)を見ながら、「自己責任」という言葉を思い出していました。2004年にイラクのファルージャでボランティアや報道関係者3名が武装集団に拘束され、人質となりました。犯行グループは人質解放の交換...


『トラック野郎⑤度胸一番星』:それぞれの望郷
トラック野郎シリーズを観ました。ただの昭和の馬鹿映画だと侮っていたら、 なんと奥深いことか!目から鱗が落ちた様な気分です。 カーアクションあり、ラブコメあり、喧嘩あり、下ネタあり。そしてちょっぴり社会的な問題が隠れていたりします。むむむ、昔の馬鹿映画は侮れない。...


ヒッチコック『サイコ』:「統一された人格」という幻想
こんにちは。サスペンスの巨匠・ヒッチコックの代表作・サイコを見ました。ヒッチコック作品では、以前に「レベッカ」を観ており、それもストーリーが秀逸でした。 昔の映画は今と違って、一人の人物の長い独白だとか、同じ画がずっと続くことが多いので、ところどころ眠くなってしまいました。...


押井守『スカイ・クロラ』:②代理戦争のリアリティ
こんにちは、前回に引き続き、『スカイ・クロラ』を用いて戦争の話をします。この物語の設定について、引っ掛かったもう一つのところは、「代理戦争によって平和がもたらされている」という点です。すでに説明しましたが、この物語の世界では、戦争請負会社によって戦争が行なわれ、そのおかげで...


押井守『スカイ・クロラ』:①戦争のない世界
スカイ・クロラは色んな要素が詰め込まれていて面白かったです。「ティーチャーと父権性」、「エヴァンゲリオンへのオマージュ」、「子供と大人の違い」など、色んなテーマを思いつきました。今回は、この作品で語られている戦争観について、たくさん思うことがあったので、このテーマにしました...