ただようまなびや岩手校:②インタビューを受けて
- krmyhi
- 2014年10月29日
- 読了時間: 5分

ただようまなびやで、そこに取材に来ていた出版社の方にインタビューを受けました。取材してくださったのは、今年、神戸で生まれた「苦楽堂」という出版社。代表の方は27年勤めた出版社を脱サラし、独立したそうです。かっこいい。
さて、ぼくとしては、ただようまなびやよりも、このインタビューで考えさせられたことの方が大きかったので、備忘録として書いておこうかと思います。
インタビューはぼくの他にもう一人同じ年頃の女性がいました。彼女のインタビューに対する回答も、ぼくにとってはとても刺激的なものでした。
特に考えさせられたのは、①「大人」との出会い方、②「3・11」との付き合い方、の二つです。以下、それについて書いていきます。
①「大人」との出会い方
苦楽堂さんは、数多くの高校生(特に被災地)を取材してきた経緯があり、その経験から、次のように述べていました。
「田舎に住む若者にとって一つの残念なことは、接する大人のバリエーションが少ないことだ。3・11後、ボランティアなどで彼らのもとを訪れる大人が増えて、彼らがとても驚いていたことは、「大人」の種類の多さである。特に働く女性。」
そして、そのような話を踏まえて、ぼくら若者は「自分にいい影響を与えてくれそうな大人」と出会うためには、どうすれば良いと思うか、ということを質問しました。
このようなことについては、考えたことがなかったので、とても面白い質問だなぁと思いました。
確かに、ぼくら田舎に住む若者は、出会う大人のバリエーションが絶望的に少ない。それは単に「職業」の面で述べてもそうである。少なくともぼくが、日常的に出会う大人は、「教職員」か「飲食店の店員」の2種類ほどだ。あとは、学校と取引をしている業者さんや、行きつけの本屋の店員というところだろうか。やっぱり、どう考えても少ない。
ぼくの回答としては、
「確かに、出会う大人のバリエーションの少なさについては、都会に比べて圧倒的に少ないと思う。しかし、周囲に「良い大人」はたくさんいる。仕事で、少しだけしか会話しなくても、「この人ともっと話してみたい」と思わせるような大人は、ぼくの周りにはいっぱいいるので、まずはそういう大人たちと、きちんと話す機会を設けることを考えた方が良いかもしれない。」
という内容のことをお答えした。
これは本心だ。周りに「ロールモデルとなりそうだけど、きちんと話す機会が無い」大人がたくさんいるために、ぼくは今まで「良い大人に出会いたい」という欲望が生まれなかったのだろう。しかし、苦楽堂さんが指摘してくれたような視点は大切だと思う。ぼくたちはもっともっと自分のロールモデルとなるような大人と出会う努力をしても良い。
②「3・11」との付き合い方
この「ただようまなびや」というワークショップは、3・11を機に生まれたものです。
二日目の最後に、参加者からの質問を受けて大友良英さんが、「3・11以降、カッコつけずに生きようと思った。」ということを語っていた。
ぼくと一緒にインタビューを受けていた女性は、その言葉に感動したと言っていました。ぼくもその言葉がとても印象に残っていたのですが、苦楽堂さんは違いました。苦楽堂さんのような大人にとって、そのようなことは当たり前過ぎてしまって、特に感銘は受けなかった、とのことでした。
ほほぅ、そうなのか。大人たちはそんなことを考えていたんだなぁ、と感心させられてしまいました。大友さんの言葉にも感心しましたが、「そんなことは、言わずもがなだ」と言った苦楽堂さんの言葉の方に、より感心させられました。
苦楽堂さんは、「3・11」との付き合い方について、
飲み屋でのんでいる時に、ふと、「そういえばあの時、ああだったよな」と話が出てくるような、そんな肩肘張らない関係性がいいのではないか
ということを仰っていました。確かに、ぼくもそう思うし、このワークショップで良かった点は、声を大にして「3・11」のことを叫び立てなかった点だと思います。それでも、参加者についても講師についても、あの震災がこのワークショップの奥に底流していることを理解している。あの震災があったからこそ「言葉」を学び直す必要があるということを、ただようまなびやに関係する誰もが、意識的にも無意識的にも思っている。
あれほど我々の心にトラウマを負わせた事件と、このような「関係性」を築きつつあることは大変喜ばしいことです。
と、それと同時に、やっぱりぼくの周囲では、あの震災についてはちょっとギアを入れ替えないと語りだせない空気がある。「ただようまなびや」に参加するような人々は、各々あの震災との関わり方を少なからず模索してきた人たちであって、そういう人たちとは、肩肘張らずに当時のことを語り合えるだろうと思う。しかし、震災のことを忘れつつある人、あまり興味が無い人と、その意識を共有することはまだ難しい。あの震災について語ることはできたとしても、変に肩に力が入った語りになってしまいそうなのです。
でも、それって「3・11」のことに限らないな、と思いました。政治全般についても、自分の周囲と話す時には妙に口角泡を飛ばしてしまいがちです。自然体で語り合うことができない。
そういったものを語り合う相手として最適なのは、やっぱり「大人」でしょう。政治や「3・11」ときちんと向き合ってきて、そういったものと、つまり若者がまだ上手い付き合い方を持てていないようなものと、「良い関係」を築いている大人と出会うことで、若者が学ぶことは多いと思います。
「大人」というものがキーワードとなったインタビューでした。
(インタビューの内容については、後日ウェブページにアップするとのことなので、リンクを張らせてもらいます。)
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